特集 業界・企業研究でライバルに差をつける!“知る

 みなさんの1つ先輩、2017年卒生の就活スケジュールは2年連続で変更になりました。とはいえ、解禁日を待たずして動きだす企業の姿はなんら変わりはありませんでした。結局のところ、企業の「ホンネとタテマエ」を読み取って、早めの対策ができていたかが、明暗をわけたようです。
 「就活なんてまだまだ先」とのんびり構えている方もいるはずですが、夏休みにインターンシップに参加した友達も多いのではないでしょうか。ライバルは一歩どころかもっと先を行っている可能性も十分あります。
 大学生協にもすでに2018年卒生向けの就活コーナーが設けられ、たくさんの対策本が並んでいます。ただ、そのなかで、企業研究に役立つ本はあまり多くありません。だからなのか、「学生は企業研究・業界研究ができていない」というのが、採用活動で企業側から寄せられる最大の不満になっています。
 そこで今回は、企業情報に定評のある東洋経済新報社に話をうかがい、業界研究・企業研究本を徹底的に解剖してみました。
 東洋経済は『会社四季報 業界地図』や『就職四季報』などの就職本を発行し、昨年度、大学生協で、業界研究分野ではベストセラー上位4誌を独占。特に「業界地図」ではライバル誌を大きく圧倒し、実に70%を上回るシェアを占めています。企業取材に日々奮闘する四季報記者たちが書いた企業情報は、皆さんの会社選びにとって頼りがいのある指針となるでしょう。

就活の第一歩は企業を知ることから

 いま最終学年を迎えている2017年卒生の就活は、昨年に続くスケジュールの変更で、前例が必ずしも通用しなくなっています。実質的に短期戦となる中、表立っての選考が解禁になる6月を前に、既に内定を持っている人はオワハラに、まだ手元にない人は「無い内定」の不安にと、疑心暗鬼に陥る就活生も多いようです。ただ、こと就職率に目を向ければ、昨年に引き続き好転しています。厚生労働省と文部科学省の調査による大学生の就職率(4月1日現在)は97.3%と、5年連続の改善となりました。また、採用人数を昨年比で増やす予定の企業も多く、完全な売り手市場であることは疑う余地もないようです。リーマン・ショック前の2008年前後の水準まで戻り、“高望み"も十分叶う環境に来ているといえるでしょう。

 一方で、ここ数年のキーワードである「厳選採用」は変わらないどころか、大手企業ほどその傾向が強いと言われています。知名度の高い会社、身近な製品を扱っている会社には、「数撃ちゃ当たる」とばかりに、就活環境の良好さに甘えて安易に受ける人が多くなります。環境がよいので倍率が低いのかと思いきや、例年よりも高い競争率になってしまうのです。

 就職するのに優良企業に入りたいのは当然です。ただ、コミュニティを重視する皆さんの「優良企業」の基準は、仲間に評価される会社、つまりテレビCMなどをやっていて、みんなが名前を知っている有名な会社、ということになってはいないでしょうか。

 最近の学生さんに「よい会社」の基準を聞くと、業績がよいとか、特定の活動をしているといった、社会のなかでの会社の姿を挙げる人が少なくなったと嘆く人が多いです。代わりに、「説明会で会った社員さんの感じがよい」「面接で自分の話を真剣に聞いてくれた」といった、自分基準の数少ない事例を重要視しているようです。社員に聞いた話は100%真実とはいえない場合もあります。会社の人や働き方について、意識せずとも多少のお化粧をするのは当然ですし、身分を明らかにしたうえで第三者に自分の会社の悪い面を指摘する人は、クビとまでは言いませんが、会社に居づらくなることは覚悟のうえでしょう。

 知名度は高くなくても、優良企業はたくさんあります。OB・OG訪問は、情報収集の一つのツールでしかありません。就活のスタートにあたって、まずやってほしいのは、自分の手足を使って業界・企業情報を調べ、知っている企業を増やすこと。それにあたって、知っておいてほしいのは、情報の質の違いです。

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情報には客観情報とそうでない情報がある

 日々、情報の洪水にさらされている皆さんには、情報には2つの種類があると言ってもピンとこないかも知れません。

 就職ナビなど就職情報の多くは、クライアントが存在し、クライアントが皆さんに「見せたい」情報だけを提供しています。ある会社が載っている場合に、就職ナビ提供の情報に見えますが、実際はクライアントである企業が発信した情報です。これに対し、東洋経済やその他の経済出版社、新聞・通信社などの有料媒体は、情報提供者自身が発信する「客観情報」であることが特徴で、ここに大きな価値があります。

 近年、「ブラック企業」の存在が大きな注目を集めています。何をもってブラックとするのかは人によっても判断基準が異なりますが、「大企業」とか「上場企業」といったレッテルは、働きやすさとは関係がありません。また、一度の不祥事によって、存亡の危機に立たされるケースも珍しくなくなりました。すなわち、大企業だから安心でいるわけでもないですし、上場しているから安泰とはいかないのです。会社に就職できたはよいが、後で泣くはめにならないように、客観情報で裏をとっておく必要があります。

 客観情報だからこそ、情報が同一基準で並べられ、企業や業界間の比較が容易です。会社情報に限らず、情報は比べてみることで、自分の好みが明確になってきます。食べ物やファッションでもそうですよね。良い情報、悪い情報を両方とも自分にぶつけ、自分がどう感じるかによって企業を選んでいくこともできます。逆に、自分が「興味がもてる」と感じて選んだ会社のデータや事象を洗い出してみましょう。「年収が高い」、「トップシェア企業」といったことで構いません。今度はそのデータや事象から、自分の基準に当てはまる企業を拾っていくことで、最初は社名を知らなかった企業でも、興味が出てくるということがあります。

 もう一つ、クライアントが発信する非客観情報には、固有名詞があまり出てこないという特徴が挙げられます。主要な取引先でも、その会社とだけ取引しているわけではないので、なかなか社名を出せません。すぐれた技術をもっていたり、シェアが高いとしても、「競合A社に比べて」といった社名を出すと、ことさらにA社を強調するようにも見られ、出すのは控えるのが通例です。

 客観情報なら、こうした会社と会社の関係性が具体的な社名とともに出ていますから、たとえばソニーにしか興味がもてなかった人でも、ソニーを販売相手に持っている部品メーカーや、意外な製品でソニーと競合しているニッチな会社など、「業界地図」やビジネス誌などの客観情報を調べることで、興味のもてそうな会社が雪だるま式に増えていきます。

 ネット情報の氾濫で、客観情報と非客観情報はなかなか見分けにくくなっていますが、ことに非客観情報のあふれている就職情報については、意識して、客観的・中立的な情報を取り入れていくことが、自分の知っている企業数を増やす最大のポイントだといえます。

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就活満足度を高める一般向けビジネス情報

 とはいえ、就活生向けにアレンジされている情報に比べ、『会社四季報』や「業界地図」は社会人も広く対象としている本なので当然ながら内容も高度です。正直「とっつきが悪い」という感じは否めません。また、「情報は多ければ多いほうがよい」のだから、客観情報であろうとなかろうと、ともかく情報を集めるべきだと考える人もいるでしょう。

 実は、「就職関連情報の利用数が多ければ、良い就職結果を得られるわけではない」という調査結果があります(※)。情報を多く集めても、なかには質の悪い情報が含まれていたり、質の良い情報でも上手に活用できでいない可能性があるというのです。むやみに多くの情報を集めるよりも、その質や利用方法が重要です。さらにこの調査では、ビジネス雑誌やIR情報などの一般向けビジネス情報を利用する人は、就職先への満足度や就活の自己採点といった主観的な就職結果でプラスの影響があるという結果も示されています。

 とっつきが悪い客観情報、一般ビジネス情報ですが、ポイントをつかめば決して難しいものではありません。また、せっかく良質な情報が収録されていても、受け取る側にそれを読み取る力がなければ、意味のない文字の羅列になってしまいます。次のページからの個別レッスンで、「情報の質で差をつける」就活をスタートさせましょう。
「大学生の就職活動における情報活用の意義―大学4年生調査の分析―」日本キャリアデザイン学会『キャリアデザイン研究Vol.7』

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